浅草法人会

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税制改正の提言

基本的な課題

I.東日本大震災からの復興にむけて

1.復興財源について

  1. 増税を実施する場合の期間
    • 震災からの復興財源は、今を共に生きる我々が、我々の責任において負担することを大前提とすべきである。
    • まず不要不急の歳出見直しと無駄の削減を徹底的に実施し、それでも財源が不足する場合には、臨時的な増税もやむを得ないものと考える。
    • 増税を実施する場合には、国民の理解を得たうえで復興後の経済の重荷にならないよう極力短期とすべきであり、またその開始時期も景気への影響に十分配慮する必要がある。
  2. 増税税目についての留意点
    • 国内産業の空洞化や雇用、消費へ悪影響を及ぼす恐れから、所得税、法人税の増税には問題がある。税制規模と安定性、さらに景気に対する中立性の観点から消費税が最も適していると考える。
    • その場合、消費税増税は被災者も同等に負担することになるため、何らかの配慮的な措置を講じるなどの必要がある。

2.震災復興に向けた各種支援の拡充

  1. 被災地企業の法人税を一定期間、減免
  2. 固定資産税の弾力的運用
  3. 特区の創設

II.社会保障と税の一体改革

1.社会保障制度に対する基本的考え方

  • わが国の社会保障制度は先進国のなかでは「中福祉」に位置し、国民負担率は米国に次ぐ「低負担」である。
  • この「給付」と「負担」をバランスさせるためには既存の給付のあり方を見直すとともに、負担についても「中負担」にする必要があり、またその財源は安定的でなければならない。
    1. 財政赤字を加えた滞在的国民負担率は、将来にわたり50%程度にとどめるべきである。そのためには「自助」と「公助」の役割分担や、給付の効率化も極めて重要になる。
    2. 社会保障の安定財源としては、政府の一体改革案が示したように消費一般に広く公平に負担を求め、かつ税収が景気に左右されにくい消費税が適しており、その税率の段階的引き上げはやむを得ないと考える。但し、国民に負担増を求めるためには、行政改革のさらなる徹底は不可欠であり、かつ景気への十分な配慮がされるなど国民各層の合意を得るための努力が必要であることは言うまでもない。
    3. 企業への過度な保険料負担を抑え、経済成長を阻害しないような社会保障制度の確立が求められる。

2.財政健全化に向けて

  1. 財政運営戦略にある健全化目標を着実に達成すべき。
  2. 国債の信認確保は極めて重要。

3.行政改革の徹底

  • 震災復興と社会保障の財源確保のためには「増税やむなし」とするが、それは国・地方においてぎりぎりまでの行政改革が行われることを前提としている。
  • しかしながら、改革の取組みは極めて不十分であり、もはや改革の先送りは許されない。国会・地方議会は国民に痛みを求める前に、まず自ら身を削る覚悟を示すことが必要である。
  • 直ちに、以下の諸施策について期限を定めて改革を断行するよう求める。
    1. 国・地方における議員定数の削減、歳費の抑制
    2. 国・地方公務員の人員削減、人件費の抑制
    3. 特別会計と独立行政法人の見直しによる無駄の削減
    4. 民間活力を阻害する各種規制は大胆に改廃し、民間にできることは民間に任せ成長につなげる

4.税制の抜本改革のあり方

所得、消費、資産の課税バランスを図ると同時に、国際間の経済取引の増大や多様化の観点、諸外国の租税政策等との国際的整合性、成長と雇用を創出するという視点等を踏まえることが重要。特に、法人税の改革は喫緊の課題。

5.共通番号制度の早期導入

以下の点を踏まえた上で、早期導入に向け、積極的な検討を進めるよう求める。

  1. 制度の創設、維持にかかるコストの明確化
  2. 税務情報などプライバシー保護のための法整備
  3. 税務面のみならず社会保障分野にも活用するなど、納税者の利便向上に配慮

III.経済活性化と中小企業対策

1.法人税率の引き下げ

  • アジア・欧州各国では、近年、国際競争力の強化や外国資本の誘致などを図るため、法人税率の引き下げが行われており、わが国との税率較差が拡大している。
  • また、年々社会保険料が引き上げられていく状況を加味すると、企業の負担感は高まっており、こうした状況が続けば、国内企業の海外移転が促進され、雇用の悪影響、さらには経済全体の衰退につながる恐れがある。
    1. 平成23年度税制改正法案に盛り込まれた法人実効税率5%引き下げは法案どおりの成立を求める。
    2. 法人税率のさらなる引き下げにより、早期に欧州、アジア主要国並みの30%以下の実効税率とするよう求める。

2.事業承継税制の拡充

  • わが国の企業の大宗を占める中小企業は、地域経済の活性化、雇用の確保などに大きく貢献しており、経済の根幹を支える重要な存在である。その中小企業が相続税の負担等により事業が承継できなくなることは、日本経済に大きな損失を与えるものである。
  • 平成21年度税制改正で創設された相続税、贈与税の納税猶予制度は、その適用要件が厳しく設定され、積極的な利用が困難との声が多い。
    1. 納税猶予制度の要件緩和と充実
    2. 親族外承継に対する措置の創設
    3. 「事業用資産を一般資産と区別し、事業用資産の課税を軽減あるいは免除する」本格的な事業承継税制の創設

3.中小企業の活性化に資する税制措置

わが国経済の礎であり、また、地域経済の担い手である中小企業が時代や環境の変化、特にグローバル化の流れの中で、その存在を確保し、社会経済への貢献を続けることができるような税制の確立を求める。

  1. 中小企業の技術革新など経済活性化に資する措置の本則化
  2. 交際費課税の見直し
  3. 役員給与の損金算入拡充

IV.国と地方のあり方

  • わが国の中央集権的システムは経済社会の現状に適合しなくなっており、行政財面の非効率化のみならず、地域経済の活性化をも阻害するに至っている。そういう意味で地方分権は必然的流れであるが、その際にはまず国と地方の役割分担を明確化し、税財政や行政のあり方を考えねばならない。
  • 国と地方は行政を担う「車の両輪」であり、一方だけに負担を偏らせることがあってはならない。国の財政が地方よりはるかに悪化している現状を考えれば、いかに地方が国依存から脱却し、自立・自助の体質を構築するかが重要である。
    1. 広域行政による効率化の観点から道州制の導入について検討すべき。
    2. さらなる市町村合併を推進すると共に、議員定数削減や行政のスリム化などの合併メリットを追及すべき。
    3. 地方公務員給与は、国家公務員給与と比べると依然としてその水準は高く、適正水準への是正が必要。
    4. 地方議会は、大胆にスリム化し、より納税者の視点に立って行政に対するチェック機能を果たすべき。
    5. 地方交付税を中心とした三位一体改革をさらに進めると同時に、適正な課税自主権を発揮すべき。

V.その他

  1. 環境問題に対する税制上の対応
  2. 納税環境の整備
  3. 租税教育の充実
    学校教育はもとより、社会全体で租税教育に取り組み、納税意識の高揚を図っていくことが必要。

税目別の具体的意見

1.所得税関係

  1. 所得税のあり方
    基幹税としての財源調達機能を回復するためにも、所得税・住民税は広く国民全体で負担していくものとすべき。
  2. 各種控除制度の整理・統合
    諸控除の整理・合理化を図るとの観点から見直しを優先すべき。
  3. 少子化対策
  4. 金融所得一体課税

2.法人税関係

  1. 同族会社の留保金課税制度の廃止
  2. 「中小企業者に対する法人税率の特例」の適用範囲見直しは不要

3.相続税・贈与税関係

  1. 相続税の課税強化は行うべきではない
  2. 贈与税は経済の活性化に資するよう見直すべき

4.消費税関係

  1. わが国の危機的な財政状況を考慮すると、消費税率の引き上げはやむを得ないが、行政改革の徹底、歳出入の見直しが前提であり、かつその実施時期は景気への配慮が必要
  2. 消費税を社会保障目的税とすることは慎重であるべき
  3. 当面は単一税率が望ましい
  4. 消費税の滞納防止

5.地方税関係

  1. 固定資産税の抜本的見直しを求める
  2. 事業所税は二重課税であり、廃止を求める
  3. 市町村民税の超過課税の公平を欠くため解消すべき
  4. 法人に対する安易な法定外目的税は課すべきではない

6.その他

  1. 配当に対する二重課税の排除
  2. 電子申告について
    一層の利便性を高めるとともに、地方税の電子申告(eLTAX)との一体化の検討、インセンティブとしての法人・個人に対する恒常的な税額控除制度の創設等の税制措置を求める。